「出陳拒否」裁判、「判決」のポイント解説⑥
一連の「出陳拒否」を正当化する根拠らしき事情として、被告側は、原告らがTICAに申し立てた「プロテスト」がことごとく「No Action」として退けられた点を主張していました。
簡単に言えば、「TICAのボードが問題ないと言っているのだから問題ない」「日本の裁判所が出てくる筋合いの話ではない」というわけです。
これを敢えて難しく言うと、TICAはTICAとしての団体内部の自律的な法規(ルール)を有しており、司法の審査権は及ばないという主張になります。(法律用語で「部分社会の法理」と言います)
こうした被告側の主張に対して、東京地裁は以下の判断を示しました。
①TICA内部においては、バイローその他の自律的規則を有する部分社会が構成されている可能性がある。
②しかしながら、健康な成猫や生後4カ月以上8カ月未満の健康な猫(キツン)の所有者であれば、基本的にはその所有する猫を出陳させる資格があることから、本件の紛争は、ただちに部分社会内部の紛争ということはできない。
③本件は、所定の評価基準(スタンダード)に照らしてキャットショーにおける猫の審査結果の当否が争われているものではない。
④原告らがキャットショーに猫を出陳させることを被告らに拒絶されたことにより損害を被ったとして提起された訴訟であるのだから、裁判所が司法権を行使できないほどに被告らの自律的判断権を全面的に尊重しなければならない事情は見当たらない。
⑤ショールール23.6および23.6.5に基づき、その裁量権行使に当たって考慮された事項によっては、出陳拒否という行為が一般市民法秩序と直接関係を有する効果をもたらすこともあり得る。
⑥上記に照らせば、本件訴訟にいわゆる部分社会の法理を適用することはできないというべきである。
こうした判断もまた、原告側が主張してきたものであり、裁判所は原告側の主張を全面的に採用したと言えます。
東京地裁の一審「判決」は、損害賠償請求そのものは退けたわけですが、「出陳拒否」に違法性があり、権限を逸脱して行われたものであることは認定したわけで、「出陳拒否」に問題がないとするTICAのボード決議は事実上、完全に覆されたことになります。
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