【ニュース解説】猫の急性腎不全の治療法(3)
急性腎不全になると、血中の「AIM」が単体になって尿の中に入り、死んだ細胞の塊に付着するところからの続きです。
この時、急性腎不全の発症によって障害を受けた「近位尿細管」という部分の上皮細胞(障害を受けただけで死んではいない場合)は、細胞表面にタンパク質の膜を作るのです。
興味深いことに(※研究成果の発表文にもこう書いてあります)、尿の中に入り、死んだ細胞の塊に付着した「AIM」は、このタンパク質の膜を介して、死んだ細胞の塊ごと「近位尿細管」の上皮細胞に取り込まれることが明らかになったのです。
つまり、「AIM」が尿の中に出て行くと、タンパク質の膜を介して「近位尿細管」の上皮細胞によって死んだ細胞の塊が急速に除去され、管腔の閉塞が解消されるというわけです。
ここで、研究チームはマウスを使って以下の実験をしてみました。
①「AIM」を正常に持つマウス
②「AIM」がないマウス
③「AIM」は正常にあるが、「近位尿細管」の上皮細胞表面にタンパク質の膜を作れないマウス
これらのマウスに人為的に急性腎不全を発症させると、①のマウスは「一旦悪化した腎機能が速やかに改善」したそうです。
②のマウスは「腎機能・全身状態が急速に悪化し、多くのマウスが死んでしまった」そうです。
③のマウスも「(②の場合と)同様に大半が死んでしまう」とのことでした。(「AIM」が尿の中に入り、死んだ細胞の塊に付着しても、このタンパク質の膜がないと、死んだ細胞の塊が除去されないのです)
しかし、②のマウスに「AIM」を投与すると、「腎機能は速やかに改善し、生存率も著しく上昇」したそうです。
さらに①のマウスで、ほとんどが死亡してしまうような重篤な急性腎不全を発症させた場合でも、「AIM」を投与すると「腎機能と生存率の著しい改善をみることができた」としています。
これが、「AIM」というタンパク質の投与が急性腎不全の治療法として有効であることを示した根拠ということになります。
※本日も2本をアップする予定にしています。2本目は17:00の予定です。