【ニュース解説】猫の急性腎不全の治療法(2)
せっかくの機会ですので、「急性腎不全」にも触れながら、研究成果を詳しく見ていきましょう。
なぜ、「急性腎不全」になるのでしょうか? 原因は色々あります。
「腎虚血」「敗血症」「腎毒性のある薬剤」など様々な原因によって発症します。
自然軽快する場合もあるようですが、慢性腎不全の発症につながるほか、死亡率も高く、猫の医療現場では積極的な治療が望まれていました。
しかし、これまで実用化に至った積極的な治療法はなかったということです。
「急性腎不全」の病理学的特徴の1つは、壊死した「近位尿細管」という部分の上皮細胞が脱落し、その死んだ細胞の塊が管腔内を閉塞します。
それが二次的に腎臓の炎症や線維化を引き起こすとともに、毛細血管の塊である「糸球体」の機能を低下させます。
さて、ここで登場するのが、「AIM」という血中のタンパク質(分子)です。
実は、「AIM」という分子は血液中において、単独で存在しているわけではありません。
免疫グロブリン(IgM)という分子と結合して存在しています。
しかも、「AIM」が結合している免疫グロブリン(IgM)もまた、単独で存在しているのではなく、いくつかがつながって存在しており、5つがつながったものを「IgM五量体」と言います。(5つの分子がつながった複合体ですから分子量はそれだけ大きくなります)
つまり、「AIM」は「IgM五量体」と結合したさらに大きな複合体となっており、その分子量は巨大なのです。
ですので、「AIM」が尿中に排泄されることはありません。
しかし、急性腎不全になると、急速に「IgM五量体」から「AIM」が離れ、単体の「AIM」になるのです。
単体の「AIM」だと分子量が小さくなるため、糸球体を通過し、尿の中に移行することができるようになります。
そして、尿の中に入った「AIM」は、「近位尿細管」を閉塞している、死んだ細胞の塊に付着するのです。
ここから、研究成果の”核心”に入っていきます。
(次に続く)
※本日も2本をアップする予定にしています。2本目は18:00の予定です。