「言ふままにはからるる人あり」…
「たとへば、或人の、世に虚言をかまへ出して人をはかる事あらんに、すなほにまことと思ひて、言ふままにはからるる人あり」
「あまりに深く信をおこして、なほわづらはしく虚言を心得添ふる人あり」
「又、何としも思はで、心をつけぬ人あり」
「又、いささか覚束なくおぼえて、たのむにもあらず、たのまずもあらで、案じゐたる人あり」
「又、まことしくは覚えねども、人のいふ事なれば、さもあらんとてやみぬる人もあり」
「又、さまざまに推し心得たるよしして、賢げにうちうなづき、ほほゑみてゐたれど、つやつや知らぬ人あり」
「又、この虚言の本意を、はじめより心得て、少しもあざむかず、かまへ出したる人とおなじ心になりて、力をあはする人あり」