「まめやかの心の友」…
「おなじ心ならん人としめやかに物語して、をかしき事も、世のはかなき事も、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向ひゐたらんは、ひとりある心地やせん」
「たがひに言はんほどの事をば、『げに』と聞くかひあるものから、いささか違う所もあらん人こそ、『我はさやは思ふ』など争ひ憎み、『さるから、さぞ』ともうち語らはば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少しかこつかたも、我と等しからざらん人は、大方のよしなしごと言はんほどこそあらめ、まめやかの心の友には、はるかに隔たる所のありぬべきぞ、わびしきや」