便利になる? ならない?
アジアディレクターからもリジョンオフィスからも、何の告知も説明もないので、実際のところ便利になるのか?ならないのか? 新たな問題が出て来るのか?来ないのか?詳しくは分かりません。
出陳者に直接関わる事ではありませんが、クラブやショーコミッティーメンバー、ジャッジには関係してくるので、取り上げたいと思います。
先のボードで、ジャッジブックに関する扱いを一部、変更する動議(Motion 7)が可決されました。
これまでジャッジブックは、オリジナルの「ホワイトスリップ」、そのコピーでクラークが確認用に使う「イエロースリップ」、そしてジャッジが自身の確認用に保有する「ピンクスリップ」に分かれていましたが、「イエロー」と「ピンク」のスリップは必要なくなるというものです。
Standing Rules 2017.1に書いてある「The yellow copy」や「the pink copy」は「a copy」に統一され、Judging Program 44.4.3.4 の「Signing judge’s book and giving goldenrod copy to clerk」のところも、「goldenrod(鮮やかな黄色)」という単語が削除され、単に「a copy to clerk」に変更されました。
エントリークラークにとってはドットプリンターで印字する必要がなくなり、負担軽減につながることは間違いありません。
では、実際のショー会場においてはどうでしょう?
「イエロースリップ」も「ピンクスリップ」も必要なくなりますから、ジャッジはリングクラークにオリジナルを渡し、リングクラークはそれを確認した後、そのオリジナルをマスタークラークに渡すことになります。
マスタークラークはそれをチェックし、間違いがあれば差し戻し、オリジナルを書き換えて貰う流れになります。
何か訂正する必要があった際に、ジャッジはオリジナルとイエロー(あるいはピンクも)をきれいに重ねて修正する必要がなくなるわけで、ジャッジにとって便利になると言えます。
一方、ジャッジはオリジナルを持ち帰り、TICA本部に48時間以内に送る義務がありますから、マスタークラークやショーコミッティーが再確認用に手元に置いておこうと思うなら、その場でスキャンするか、コピーを取る必要が出てきます。
ジャッジはこれまでオリジナルをTICA本部に送った後でも、「ピンクスリップ」が残りましたから、いつでも再確認出来ましたが、新しい方法だとスキャンするか、コピーする必要に迫られます。
ジャッジにとっては、マスタークラークやショーコミッティーにスキャンやコピーを依頼する手もありますが、その場合、マスターやショーコミッティーの負担が増えることになります。
ただ、単に負担が「増えるか」「減るか」の問題かというと、そうでもなさそうです。
オリジナルしか残っていないとなると、何か問題が起きた時に、どこで間違いが起きたのか(あるいは見過ごされたのか)の検証が出来なくなる懸念もあります。
ジャッジが間違えたのか? リングクラークのチェックミスだったのか? あるいはマスタークラークのチェックミスだったのか?
「オリジナル」と「イエロースリップ」、そしてそれらをクラークカタログやマスターカタログを突き合わせることで、これまではどこで間違いが起きたか分かりましたが、オリジナルしかないとなると、誰がどこでどう間違えたかが分からなくなることも考えられます。
もちろん、今回の決議は「イエロースリップ」や「ピンクスリップ」を使ってはならないということではないですから、これまで通りでも構いません。
ですので、クラブやショーコミッティーにとって困るのは、Aジャッジが「新方式にしよう」といい、一方、Bジャッジが「従来方式の方がいいです」という場合でしょう。
両方のジャッジブックを準備することなど事実上、無理ですから、ジャッジの間でも一定の共通認識を持ってもらう必要が出てきそうです。
いずれにしても、こうした重要なルール変更にあたってはリジョンディレクターなり、リジョンオフィスから、どういう理由でそうなり、どんな利便性が見込まれ、一方でどういう点に注意が必要になるかについて丁寧な説明があってもいいのではないでしょうか…。